シカが増えすぎて深刻化。山梨「ジビエ料理」が地域にもたらすもの

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2018/01/10

秋から冬にかけて、日本では全国的に狩猟シーズンを迎えています。北海道以外の一般的な地域では、11月15日が狩猟解禁日。各地で約3か月間の狩猟シーズンが始まりました。狩猟で仕留めた野生のシカやイノシシを、ジビエ料理として各地で提供する場も増えてきています。今回は、山梨県北杜市にあるジビエ料理店を紹介します。

 

八ヶ岳のふもとで営むジビエ料理店「さの家」

山梨県北杜市にあるジビエ居酒屋「さの屋」

 

山梨県北杜市にあるジビエ居酒屋「さの家」は、オーナーで料理人の佐野琢哉さん自身が猟師を名乗り、地元で獲れる野生動物を使ったジビエ料理を提供するお店です。

もともと清里地域のホテルで料理人として働いていた経験があり、そのころから地域の猟友会メンバーとも親交があったという佐野さん。

 

食材としてのジビエの魅力を料理人として発信したいという思いから、地域のイベントでジビエ料理をふるまうなどの取り組みを行ってきました。独立し、自分の店をオープンしてからは、猟師としてさらに精力的な活動を行っています。

わなの見回りとセンサーの動作確認を行う佐野さん

 

山梨のジビエを知ってもらいたい

ジビエをめぐる佐野さんのつながりは、地域でも新しい取り組みを生みだしています。

例えば、清里でイタリアンレストランを営む「生ハム職人」こと森本慎治さんと一緒に、野生のイノシシ肉を使ったジビエ肉の生ハムづくりを仕掛けたり、仲間と「一般社団法人ナチュラルミート協会」を立ち上げ、ジビエ料理のBBQイベントを手掛けるなど、ジビエの普及活動に力を注いでいます。

もっと広く多くの人にジビエを味わってもらうためには、とにかくまず知ってもらうことが重要と考え、ジビエに関するイベントを精力的に開催しているとのこと。

ジビエの認知が高まり、消費される量が増え、ジビエの流通が盛んになれば、ジビエは地方経済を救う一つの手段になりうるのではないか、そんな思いでジビエの普及に力を注いでいるのです。

生ハム職人森本慎治さんのお店「MoRimoTo」にある生ハム熟成庫

 

一番人気は「いのしししゃぶしゃぶ」

さの家で提供しているジビエ料理の中で、一番人気はいのしししゃぶしゃぶ」。脂が乗ったいのししの肉を薄くスライスし、地元で収穫された旬の野菜とあわせていただく鍋料理です。


さの屋自慢の「いのしししゃぶしゃぶ」1人前2500円~

 

肉は低温で熱を加えると柔らかく仕上がることから、だしが沸騰したところで弱火にし、野菜をひとつかみ鍋に入れます。野菜で温度を下げてから、いよいよお肉を投入。じっくりとだしの中で温めて、野菜と一緒につかみ上げ、そのまま口の中へ。

 

だしは、こんぶと白だしをメインに、塩としょうゆを加えたオリジナルで、いのしし肉の旨みを引き立てるシンプルな味付け。香味野菜を含む八ヶ岳の新鮮野菜の香りと、イノシシ肉の柔らかく甘い舌触りが一体となって、豊潤なおいしさを生み出します。

しゃぶしゃぶした肉を野菜といっしょに食べるのがポイント。

 

普段は柔らかい雌のいのしし肉で提供することが多いそうですが、この日のいのししは雄、脂が乗って甘みのある味わい深い肉でした。ジビエ肉は、肉それぞれの味が違うことも楽しみの一つ。

いのしし鍋は、狩猟シーズンの冬以外にも、いのしし肉が入手できれば通年で提供しているメニューです。野菜は季節にあわせた旬のものを用意し、訪れるたびに違った味わいを楽しめるそうです。

 

さの屋の料理メニュー。数多くのジビエ料理がならんでいる。

 

私が最初に佐野さんにお会いしたのは、佐野さんがまだ自分のお店を持つ前。増えすぎたシカの害が深刻化していた八ヶ岳のあるイベントで、わな猟の現場にご一緒する機会があり、その時に「増えすぎたシカをジビエとして食べられないか」と議論したことを覚えています。

 

私も同じ思いで狩猟免許を取得しているのですが、佐野さんの取り組みが地域の鳥獣被害などの解決に貢献したり、取り組みによってジビエを地域の特産として有効に活用するつながりが生まれている経緯を改めて知って、ますます佐野さんの料理をおいしく感じるのでした。

 

取材先
ジビエ居酒屋 さの屋
山梨県北杜市高根町箕輪1144
営業時間 火~日17:30~23:00

 

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アウトドアナビゲーター、温泉ソムリエ。JFNラジオ「JOYFUL LIFE」パーソナリティほか、山、温泉、音楽をテーマに様々なメディアで情報を発信中。子連れで各地をめぐり、温泉やアウトドアの取材、子連れ旅行の啓発などを行っています。

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